アンティークのダイニングチェア張替えと修理のご紹介です!
今の時代、残念ながら使い捨ての風潮も強く、「買ったほうが安い」という声も多く聞かれます。
確かに座れるものなら何でも良いのであれば買ったほうが安いかもしれません。只、物の価値は価格だけはないはずです。特にアンティーク家具は長い年月、その時々に使っていた人たちによって手入れと補修により今日まで存在しているのです。使い捨てが当たり前になると、アンティーク家具はこの世から消えてしまうかもしれません。
今回の椅子は、最近では出会うことが少なくなってきた座面にスプリングが入ったタイプです。
このタイプの椅子は買ったほうがどころか、完全にオーダーメイドでもしない限り新品で買うこと自体極めて難しいでしょう。もちろん量産品と同程度の価格では済まないかと思います。
Before画像で分かるように外見では分かり難いのですが、中を開けてみるとかなり傷んでおりました。ウェビングテープも複数個所切れておりスプリングも全く固定されず椅子としての機能が保たれていない状態です。ウレタンも経年劣化で粉々ですね。もちろん座っても不安定で決して座り心地は良くありません。
スプリングの位置を戻して固定し、ウェビングテープもウレタンも新しいものに交換します。傷んだところを全て補修すると椅子はまた息を吹き返し、その役割を果たしてくれます。完成した画像を見て分かる通り、座面もしっかりと張られ、凛とした美しい姿の椅子に生まれ変わりました。しっかりと固定されたスプリングの座り心地は最高です!
もちろん費用はウレタンだけの椅子よりかかります。しかし、これでまた愛着のある椅子と何年も一緒に生活を楽しむことができるのです。椅子には木の命があり、製作者・職人の思い入れがあり、長年そこに住まう人たちの生活を陰ながら支えています。手入れをし、時には補修を繰り返すことによって次の世代、また次の世代へと引き継ぐことが出来るのです。何世代に渡って家具を使い捨てる費用と比較していかがでしょうか? どちらが得で価値のあるものかを考えされられますね。
そして、長年生き続けてきた古い家具が一瞬で無くなることは最初にお話ししましたが、そうなると無くなるのは家具だけでなく、技術も継承されずに無くなっていくのです。技術を持った職人さんがいくなってしまうと、いざ張替えや修理をしたくもそれができなくなります。それは決して遠い先の話ではないと肌で感じています。