間違いだらけのカーテン選び
~メーカーとショールーム~ ビジネスモデルも後ろ前
皆さんはカーテンのメーカーやブランドの名前っていくつ言えるでしょうか?ほとんどの方は知らないか、一つか二つ知っていれば良い方かと思います。お店の名前と混同する人もいますね。服飾品、自動車、食品などのメーカーやブランド名は皆さん大変良く御存じなのにカーテンとなるとなぜこのようなことが起こるのでしょうかね?今回は消費者の皆様に是非知っておいて頂きたいカーテン業界の内情を少しお話させて頂きます。
結論を先に言いますと、メーカーや輸入商社や代理店などが他の業界とは違い、自社や取扱いブランドのPRや広告宣伝などを一般消費者向けには行わないからなのです。機械部品など一般消費者が直接購入しない物ならまだわかるのですが、オーダーとは言え消費者が使用する商品を販売しているにも関わらず消費者にアピールしないのです。長年コンシューマービジネスに携わっている私達からすればそれはとても不思議で異例なことなのです。一般的な小売・流通業に携わっている方ならその異例さがよくわかるかと思います。いや、ごく普通の方でもわかりますよね。
ではなぜそのような習わしになったのでしょうか?それを説明する前に、先ず私達のような消費者の方々に直接カーテンを販売する専門店は業界では”前売り店”と呼ばれているということをお伝えしなければなりません。他の業界ならごく普通の販売店や小売店と同じなのですがカーテン業界では特殊な扱いとなっています。前があるということは当然後ろがあるのです。”後ろ売り”という言葉は存在しないのですが、この後ろで売る方法がまだまだ主流なのです。それはハウスメーカー、工務店、設計事務所、インテリアコーディネーター、引越業者などなど様々な(特にカーテンの専門家が不在の)中間業者を経由して消費者の皆様へ販売する方法です。今までのコラムでもそのような購入方法においてはで多くのデメリットが発生することをお伝えしてきました。
小売業に詳しい人ならこの時点でなぜ消費者へPRしないのかはもうお分かりかと思いますが、メーカー等はその中間業者の人々に自社商品を売ってもらいたいため業者へばかりアピールするのです。しかしこれも何度もお話していますが日本では住宅産業に関わるプロでさえカーテンやインテリアを本当に理解している人はまだまだ少ないのです。そこへアピールしても消費者には商品の特性・品質・使い方・価値等、そして一番大切な楽しみ方が伝わらないのです。メーカーの名前すらあまり知られていないことが実際に伝わっていない何よりの証拠ですよね。消費者が使用する商材である限り、消費者に情報提供しなくては売れないことに長年気付いてないのです。内向き、思考停止の典型ですね。消費者はどんなに良いものでも知らない物は購入しないのが普通です。高額商品になれば尚更ですよね?わからなければ安い物を求めるのは自然な行動です。でも本当は様々な価格帯の様々なデザインと素材の生地とスタイルが存在するのです。
それを良しとしない私達は店頭や関連サイトで情報提供を使命と思ってできる限り発信するよう心がけていますが、専門店がメーカーやブランドのPRまではなかなか担えません。ですから消費者の皆様が名前を列挙できないのは皆様が悪いのではなく、知らせない方に問題があり、それによりきちんと消費者に合った商品とサービスの提供ができず中途半端な提案になる場合もあるのです。情報をお持ちでない消費者は”そんなものなんだ”と思わされてしまうのです。専門店ではご来店さえして頂ければより沢山の情報をお伝えすることができます。
次はメーカーショールームの話です。実は国内外のメーカーや輸入商社などのショールームが東京を中心にですがあることを知らない人も多いです。理由はもちろん先程のお話と同じです。ほとんどのショールームは何も業者専用ではなく一般のお客様もいつでもアポなしで自由に商品を見ることができる場所なのです。ショールームのメリットはその場で直接購入できない為、購入のプレッシャーが全くない上に大きなサンプルを数多くご覧になれることです。デメリットはメーカーやブランドが限定されるので他メーカーとの組合せなどがイメージしにくいのとメーカーごとのショールームを周るとなると少し労力が必要になるということです。
コーディネートは専門店が本職なのでショールームでは気に入った生地など単体で確認頂ければ話は早いです。ショールームでもコーディネートや場合によっては概算価格も出ますが提案は自社商品に限定されてしまいますし、販売はあくまでも各取扱い店なので価格は業者ごとに異なります。完成品ではなくオーダーカーテンなので縫製仕様などでも価格は変わりますのでメーカーの価格が絶対ではなく、あくまでも参考価格として捉えて頂ければ結構です。縫製に関してもメーカーの縫製が必ずしもベストではないのです。変わらないのはそれぞれの生地の1メートル当たりの単価です。この単価が実はカーテンのお値段に大きく影響致します。
ショールームでの大きな問題点は商品は見れるのですが、どこで購入できるかという情報を積極的に出さないことです。問い合わせた時に一番よくあるのはそのお客様の住所に一番近い業者を紹介するパターンですが、一番近い業者がその人にとって一番良い業者とは限らないのです。その証拠に当店でも県外から数多くのお客様にご来店頂いております。メーカーはそれが公平だと信じ込んでいますが、業者をあてがうのではなく必要あらば各販売店の特色を伝え、お客様自ら自由に選択できるようにすることが私達は公平だと思っています。
以前私達はショールームを持っている主なメーカー各社に一般のお客様をもっとショールームに来てもらい、商品を購入できる全国の専門店一覧やパンフレットなどを置き、お客様が自由にご自身の好みのお店を選べるように情報提供して下さいと提案したことがあります。しかし口をそろえて”不公平になるので不可”という回答でした。私の頭の中では???でした。なぜお客様に購入できるところを沢山紹介することが不公平になるのか一瞬戸惑いました。しかしすぐに理由はわかりました。覚えていますか?そうです、”後ろ売り”の存在です。専門店のほうが遥かに知識やスキル、商品の良さと楽しみ方を伝えられる力を持っているにも関わらず専門店だけを紹介することが不公平になるという論理です。消費者の皆様へのメリットと公平性ではなく、専門知識も少なく店舗すら持たない”後ろ”への”配慮や尊宅”なのです。
とはいえ、ショールームは大変有益な場所ですので消費者の皆様には大いに利用して頂きたいと思います。輸入生地などは特に専門店では置ききれない本当に素晴らしい生地を数多く見ることができます。そのような場所が広く知られてないなんて非常にもったいなく、まさに宝の持ち腐れなのです。もちろん有名なメーカーでもショールームを持ち合わせていない会社もあります。そのような場合は専門店へご相談下さい。ない物はもう何もないくらい成熟している日本の市場ですが、インテリアファブリックスの世界に関してはまだまだほとんどの人やメディアにさえ知られていません。メーカーの動きより消費者の皆様の方が余程好奇心と行動力があり遥かに先を行っている時代です。見て、聞いて、触って、知ることにより世界はまだまだ広がりますよ!わからないことがあれば先ずは皆様に一番近い”前売り店”にご相談下さい。
現在は家を購入する業者等から紹介されてショールームを訪問するお客様が圧倒的に多いのでショールームのスタッフの方もそれが前提のような対応をする場合もあるかもしれません。でもショールームは誰でも入れる場所ですのでどうぞお気軽にご利用下さい。ご心配であれば「デコラドールから紹介されました!」と言って頂いても全然構いません。