間違いだらけのカーテン選び
~押し付けには注意!?~
○カーテンや壁紙は白無地系の方が部屋が広く見える
○部屋の色は下から濃い色で上にいくにつれて薄くなると部屋が広く見える
○カーテンの裾は床上1cm
これらはよく専門家風の方から聞く言葉です。
間違いとは言いませんが、あまりこういうことに捕らわれると”無難”なお部屋にしかなりません。
日本の家のほとんどが白い壁です。このことに疑問を抱く人は少ないです。なぜ白ばかりなのかは別のコラムにも書きましたがコストの問題と業界内でもそれが当たり前と考えている人が多いので結果としてそれが標準になってしまっただけなのです。どちらかというと消費者主導ではなく業者主導の考え方です。広いことだけが素晴らしいことではないので色は何色にしても構わないのです。濃い色を使っても素敵な部屋にすることはいくらでもできるのです。カーテンの裾も床を引きずるスタイルもあります。
マンションなどは特にそうですが、購入した時から既にカーテンレールが取り付けられていることが多いです。ここも疑問に思わなければならないポイントです。どのような窓装飾にするか決まっていないにも関わらず始めから付いているのです。特に変わったスタイルにする場合だけではなく、例えばシェードやブラインドにするだけでもそのレールは必要がなくなってしまうのです。ブラインドを取り付けるならばレールは外して破棄することとなります。その際ビス穴も残ってしまいます。もちろんタダの物というのはありませんのでそのレールは元はと言えばご購入者が支払ったものです。仮にそのままレールを使うにしてもほとんどの場合は最も廉価な物が使われていることが多いので滑りもあまり良くなくカーテン生地を傷める原因にもなりかねません。通常のカーテンレールですと滑りのいい少し上級のものを選んでもそれ程高価ではない上に種類やデザインも豊富で使い勝手も全然良くなります。しかしいくら廉価品とは言え新品を捨てて付け直すのは少し抵抗がありますよね?はじめからついてないのが一番消費者のためではないでしょうか?
窓周りの下地もそうです。最近の住宅は石膏ボードの壁がほとんで窓周りに下地が僅かしか入っていません。マンションはカーテンボックス以外はほぼ下地はありません。強制的にカーテンボックスがあると装飾レールはそもそも設置不可となります。戸建の在来工法でも通常の機能レールであればあまり問題にはならないかもしれませんが、ウッドレールや装飾レールは取り付け位置に制約が出てきます。場合によってはお好みのものを取り付けることができません。家を建てる側からすればそれが当たり前の構造なのかもしれませんが、カーテン屋から見たら”ありえない”のです。なぜありえないかと言いますと、そこに施主様・ご購入者の希望が入らないためです。レールは下地があるところに取り付けるのが当たり前なのではなく、レールや部品を付けたいところに下地があるべきなのです。事前にわかっていれば予め下地を入れることは可能ですしそれほど大きな費用負担にはならないでしょう。しかし残念ながら建築関連の人々はそのようなことを知らない方が多いので事前には教えてくれませんし、見えないところにわざわざ気を効かせて前もってコストをかけてまで下地を入れてくれる人はいないでしょう。一旦壁紙まで張り終え、完成してからの変更は大ごとになります。
設計に関しても、カーテンレールを取り付けられないほど際まで開口部があったり房掛け(カーテンを束ねて引っかけるフック)も付ける場所が限られるケースは最近特に多いです。房掛けは付ける位置によって見た目の印象が大きく変わるので疎かにはできません。建築物としての機能美は認めますがそこに生活する人にとっては家はそれだけではないはずです。
一見当たり前と思われていることが実は結果として制約を押し付けられていることになっているのです。そこに一般の消費者の皆様に是非気付いて頂きたいと思います。
ショールームや住宅物件情報などの写真を良く観察してみて下さい。すごく綺麗に部屋が見えるように写っているのですが、カーテンや窓周りの装飾がされてないケースって結構あるんです。それのほうがすっきり見えて販売しやすいテクニックなのでしょうか?しかしカーテンやブラインドなしで生活してる人ってそれほど多くないですよね?
これらからもわかるとおり、家造りと販売に関わる人達がカーテンやインテリアまではあまり考えていないのです。専門外ですから仕方がないことではあります。それぞれの分野ではプロではあるのでしょうがその後のインテリアや生活者の環境までトータルでは考えていません。業界の考え方が硬直しているため、このようなことは消費者の方から改善の意思表示や要望が多く出てこないとなかなか変わらないのです。施主や購入者の意見が一番強いのです。私達カーテン屋がいくら改善を訴えてもなかなか届かないのが現実です。
我々インテリアを扱う者がトータルで見れるのは建物が既に目の前にあって最後に施工するためです。しかし最後に施工するからと言って最後まで放っておくと何かしたくても手遅れとなる場合もあります。設計・建築・販売側が事前にインテリアのアレコレを詳しく教えてくれることはほとんどないでしょう。後出しジャンケンで結末がわかっているからこそ我々のようなインテリアの専門家に早めにご相談頂ければ理想の家に近づけることができるのです。別のコラムでお話しました予算配分もしやすくなります。
カーテンやインテリアを扱う者にとって家とは、建物が完成してやっと50%完成なのです。残りの半分はインテリアでその家の住み心地が決ると言っても過言ではありません。そして当然その家の主役はそこに住まう方々です。インテリアも押し付けるのではなくそこに住まう方にとって最も心地いい物でなければなりません。そのお手伝いのために我々がいるのです。
インテリアの相談で冒頭のような提案や意見が真っ先に出て来るケースは多いです。ですがインテリアには正解というものはないので多数派の考え方が正しいわけではなく、又それが貴方が求めているものとも限らないのです。可能であれば視点の違う考え方も取り入れ納得できる方法を見つけることをお勧め致します。