間違いだらけのカーテン選び
~カーテンの値段 後編~ 開眼!
現在オーダーカーテンの市場では国内カーテンメーカーの商品、海外メーカーからの輸入品、量販店などが独自で企画製作している商品、と大まかに分けることができます。独自企画商品は独自の店舗でしか販売していないので他との比較はできません。それに対して国内カーテンメーカー品と輸入品は様々な場所で販売されています。先ずは最も流通していると思われる国内メーカー商品の価格についてお話したいと思います。
国内メーカーのオーダーカーテンを扱っているほとんどの業者は”常時”大きな割引率を表示して宣伝と販売をしています。そのため消費者はここでは何割引き、あそこでは何割引きなどと割引のことばかりが注目されます。これは一見消費者にとってすごくお得なようにも聞こえますが実際はそうでもないので注意が必要です。常時割引をしているということはその価格でもビジネスが成り立つということなのです。簡単に言ってしまえば元々の定価(価格設定)が高すぎるのです。なぜそのような価格設定になっているかと言いますと、間に入る人や業者がそれぞれ少しずつ利益を分配できるような仕組みになっているからです。現在はその数は少なくなってきたとは言え、未だに不必要な中間業者などが介在する場合も多いです。不必要な中間業者とは口を利くだけで、紹介するだけでなど、実際は何もしないのに間に入るだけで購入者の目に見えないところでコストが発生するようなことです。
ナショナルブランドのようなメーカーのカーテンならメーカーが直接販売することはあり得ないので最低でも販売店という中間業者が入るのは致し方ないところですが、それ以外は本来不要です。中間に入っている業者が何者でどのような専門性を持っているかということは買う側にはもっと注意深くなって欲しいと思います。価値のある中間業者ならばむしろ存在したほうが良いのです。
ですから中間業者が少ない場合、定価で販売すれば当然その分利益率は大きくなります。しかし市場原理と言うものはそう甘くはありません。競争の原理が必ず働くので値下げの余地があれば販売側は可能な限り価格を下げて自店で購入してもらおうと努力するものです。他者より少しでも安く売るには本来必要な手間やコストまで省かなければならなくなってしまい、結果として消費者のデメリットとなる場合も多々あります。
それに輪をかけてメーカーは専門知識があるなしに関わらず少しでも販路を広げる為にカタログを無料であちこちに配布し取り扱い業者を増やしています。結果として大幅な割引率を表示で集客し、実際の利益は僅かという価格競争のなれの果てのようなことが実際に起こっています。その間によりマーケットに敏感で独自で企画製造している企業などが台頭してきています。
そのような従来の販売方法ではカーテンというものは安くて割引が当たり前だという間違ったイメージを作ってしまい、価格ばかりが注目されカーテン本来の楽しみ方、インテリアの良さ、物の違いなどというものが消費者に全く伝わらなくなってしまいます。その証拠に日本の家のインテリアやモデルルームは多少の違いはあってもほとんど似たようなものになっています。別のコラムの”白神話”とも関連しています。商品の良さや楽しみ方を消費者に伝えるのが本来メーカーの役割だと思うのですが、そういった活動はほとんど行われていません。何故かはビジネスモデルのコラムにも書いています。
結果として消費者は設定価格の高い商品を割引により、価格相応に戻し、それを少し安く買えるというのが今の国内カーテンメーカー品のオーダーカーテン市場の現実です。
国内メーカーの高い価格設定であってもメーカー間に差はあります。消費者のために良かれと思って定価を低めに設定するメーカーもありますがそうすると条件によっては売る側も50%offと謳えるところを30%offとしか言えなくなってしまい他メーカーと比べて売りにくくなります。買う側も最終的な支払額が同じでもこっちのメーカーは50%offだからあっちの30%offのメーカーよりお得!って間違った認識をしてしまいます。実際は同クラスの商品だったりするのですが割引率だけが独り歩きするケースは非常に多いです。でもよくよく考えるとメーカーも小売店も消費者も誰もあまり得はしていないですよね。得をする人がいるとしたら何もしないで右から左へ流すだけで利益を得る人くらいです。
具体的に言うと例えば実質2000円程度のものがあったとした場合、
A社は定価を4000円に設定し、販売店は50% off!!の2000円で販売。
B社は定価を2857円に設定し、販売店は30% off!の2000円で販売。
こうなってしまうと割引しか集客方法がない多くの業者はよりお得感を演出できるA社の商品ばかりを売り、B社のものは売れなくなってしまいます。実質は同程度の商品にも関わらず。そうなるとB社も定価を4000円に設定するしかなくなるのです。
このように流通形態と販売方法がきちんとコントロールされていないが為に消費者にとって非常に混乱と誤解を招く結果となっています。それによりカーテンの価格というものが非常にあやふやなものと理解されてしまい、不信感さえ与えています。最近でこそ自分が使うカーテンは洋服等と同じでこだわりがあれば専門店で、価格優先なら量販店やネットでとうまく使い分けて自分にとって何が一番得なのかを気付き始めている消費者の方々も増えてきていますがまだまだメーカーの価格戦略と販売方法に振り回されている消費者が大多数です。
また、買う側も家を買うプロセスの中で販売業者との信頼関係を既に築いているのでパッケージとして勧められるがままに購入することが未だに多いです。カーテンは本来、洋服や食べ物のように自分の着たいもの、食べたいものは自分で選んで好きな場所で買えるものであるにも関わらず、なぜか人に間に入ってもらって用意してもらうという不思議な習慣が定着しています(させられているとも言えます)。
一方輸入商品はと言いますと、もともとそのような何段階もの流通経路を想定した価格設定ではないので市場原理は当然働きますがそれでも大幅割引はできないのです。しかし、輸入コスト等もあるとは言え価格は比較的高い物となっています。国内メーカーに比べて高価格であるにも関わらず本来の適正価格となっています。同じカーテンなのですが国内メーカーとは全く性質の違ういわば正反対の商品になっているので更にややこしいのです。大幅割引ができない上に輸入品のためメーカーが全て面倒を見てくれるとこともなく、手間暇がかかり取り扱う側に縫製も含めた専門的な知識が必要なため取り扱っているお店も限られてくるのです。専門外の人達が扱いたくてもビジネスと商材両面から見ても安易に、片手間に扱える商品ではないということです。
これらのことを消費者の皆様にきちんとご理解頂きたく、住まいづくりに役立てて頂きたいと思います。