生地にはそれぞれデザインがあります。そのデザインに使用されている柄・文様には意味があるのをご存知でしょうか?文様を知ると、それが使われている物に興味が沸き、物を選ぶ際にもきっと視点が変わります(^_-)-☆
これから時々にはなりますが(^_^;)、一柄ずつその文様についてお話ししたいと思います。
今回はAcanthus アカンサスです。
「あ、この柄、見たことある!」という方は多いのではないでしょうか。そう、葉っぱをモチーフにした柄です。
アカンサスは、キツネノマゴ科の植物。ギリシャの国花でもあります。そして、Acanthusはギリシャ語でトゲを意味します。花にトゲがあることからそのような名前が付けられたそうです。日本にも伝わり、アザミに似ていることから和名は葉アザミと呼ばれています。
古代ギリシャ時代の建築、コリント様式によく見られる柱の頭部分の装飾で、このアカンサスが彫刻されています。
主にギリシャを代表する文様であるアカンサス。何故これがモチーフとしてが用いられたのかは明確ではなく長年議論されているそうです。アカンサスの葉を文様にしたという説や、エジプトのパルメットから用いたという説など・・。(パルメットは扇型の文様。こちらもまた生地や壁紙に多く用いられています。これはまた後日お話ししますね!)
諸説あるなかで、アカンサスにまつわるギリシャ神話をお話しします。
★ギリシャ神話 <アカンサスと名付けられた由来>
アカンサスという名の美しい娘がいました。太陽神アポロンはその娘をとても気に入り、結婚を迫ります。しかしアポロンに気の無いアカンサスはその申し入れを断ります。それでもアポロンはしつこく何度もプロポーズをします。しつこいアポロンを振り払うおうとしたアカンサスの爪がアポロンの顔を傷付けてしまいます。怒ったアポロンはアカンサスを植物に変えてしまいます。そうして誕生したのが、慎ましく可愛らしい花でありながら花の根先にトゲを持つアカンサスです。
★ギリシャ神話 <アカンサスの葉がモチーフとなった建築様式が生まれた物語>
古代コリントで幼い少女が死んでしまいます。その死を嘆き悲しんだお婆さんが少女が好きだったものを入れたバスケットをお墓の前に置きます。月日が流れ- 地面からアカンサスの葉が伸び、バスケットに生い茂ります。丁度お墓の前を通りかかった建築家であり彫刻家のカリマコスが美しく大きなアカンサスの葉がバスケットいっぱいに絡みついている様子を目にします。感動したカリマコスはアカンサスを彫刻のモチーフにしました。
アカンサスの花言葉は、「芸術」「美術」「技巧」そして「離れない結び目」などだそうです。なんだかうなずけますね。
そんな不思議な由来のあるアカンサスですが、ロマネスク、バロック、ロココ、19世紀後半のアーツアンドクラフツ運動と、時代の流れに沿ってその形を少しずつ変化させながらも時代を表すモチーフの一つとして長く愛され続けました。
アカンサスには数十種類あるそうですが、一番多く栽培されているのはAcanthus-mollis アカンサスモリスだそうで、園芸の世界ではアカンサス=モリスがもっともポピュラーとのこと。”モリス” 何だか不思議ですね、カーテンなどの生地の世界でアカンサス柄といえばモリス(ウィリアム・モリス)と即答するほどポピュラーなのですから。
大きく広がり幾重にも折り重なる葉の形と唐草のような伸びやかなスクロールがデザインされ、生命力と躍動感を与えます。カーテンや椅子張地などの生地、壁紙はもちろんのこと、アンティークの家具、照明、銀食器、ステンドグラス、絨毯などもよく見てみてください。アカンサスがモチーフとなっているものが多いですよ。注意深く見てくださいね♪